2018年度第9回未来院長塾レポート

2018年度最後の未来院長塾が11月25日に開催されました。


今回、新潟大学大学院医歯学総合研究科 摂食嚥下リハビリテーション学分野 井上 誠教授をお招きし、『歯科医にとっての摂食嚥下障害に対する取り組みの「今」と「未来」を考える』と題し、ご講演頂きました。

摂食嚥下障害への取り組みは高齢化が進む日本において、健康寿命の延伸を目指すためには必須であります。しかし、摂食嚥下障害を有する方やご家族に自信を持って対応できる歯科医師はまだまだ多くはないのが現実でしょう。

そもそも摂食嚥下障害とは何か?

脳血管疾患、神経疾患などを原因疾患として「食べる」「飲む」と言った摂食機能に障害をもった事を指します。

その摂食嚥下機能は、高次脳機能、口腔機能、咽喉頭機能、咀嚼機能、その他の身体機能を含む体の中で最も複雑な機能の一つである事。

摂食嚥下障害は肺炎や低栄養などのリスクを伴い、疾患によってはこれらのリスク管理を患者の一生涯にわたってフォローが必要な事を考えると、摂食嚥下障害に対する臨床は1人の歯科医のみで完結するものではありません。

これからの歯科を担う我々が学ぶべきポイントは何かについて、内視鏡デモや事例紹介なども交え非常に熱い講義が行われました。


1.超高齢社会の「今」と「未来」

団塊の世代が後期高齢者となり、高齢者が3600万人になる2025年問題や、その団塊ジュニア世代が高齢者となり約4000万人に達すると言われている2040年問題について、またそれに伴う国民医療費についてご解説頂きました。

国民の死亡原因にも触れ、肺炎と起因菌と口腔ケアの重要性についてお話頂きました。

歯科ができる少子化対策について個人的には非常に考えさせられました。

2.歯科医学教育の「今」と「未来」

今や摂食嚥下障害という言葉が広く知られるようになり、歯学教育モデル・コア・カリキュラムや歯科医師国家試験の出題基準といった学部教育の中に盛り込まれた事で、摂食嚥下障害に取り組む若い歯科医師が増える事でしょう。

そんな国家試験の基準改定に伴う日本国内の教育の変化、これから求められる歯科医師像とは何か、過去の国家試験の問題を元に摂食嚥下障害について先生の見解も添えてご解説頂きました。

3.摂食嚥下障害と歯科の「今」と「未来」

摂食嚥下障害患者には3つの問題を抱えていると言われています。

⑴呼吸器感染(肺炎)、⑵低栄養、⑶食べる楽しみの喪失

これらの問題に対してはTrans-disciplinary team approachが必要だと先生は説かれています。

患者のニーズを重視した姿勢、役割に対する柔軟な思考、コミュニケーションスキルを持って多職種とチームを形成していく必要があります。

ではスキルも知識もない一般開業医が何からすれば良いでしょうか?

①口腔ケアによる衛生状態の維持、②補綴を中心とした歯科治療の継続、③専門医への紹介

その中でも嚥下状態のスクリーニングと食事の観察が重要だとアドバイス頂きました。

その上で食形態の決定の現状と改善点と、皆大好きハッピーターンの可能性、内視鏡検査のメリット・デメリットとそのタイミングについても勉強できました。

今回で2018年度の未来院長塾は最後で、最後に相応しい素晴らしい講演でした。

井上先生は勿論、今期ご講演賜りました全ての先生方にこの場をお借りしてお礼申し上げます。

来年度はこの2年間の経験を活かし、より魅力的な学びの場になる事をここに誓います。

来年度の塾の内容は近いうちに掲載しますので、チェックして下さい。

今後も未来院長塾は「歯科医療を通じて日本の医療課題を解決する」を目標に活動を続けて行きます。

それでは、皆々様良いお年を。


                                報告者 新井 是英

未来院長塾

バランス良く学べる場を提供し、将来の目標を達成するためのキャリアパスを、自分自信で描くことができる歯科医師の養成をミッションとしています。そのことが、医療を受ける生活者や、地域社会への貢献に繋がり、歯科医療従事者自身も社会に必要とされ、双方の満足に繋がると信じています。

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