2017年11月19日に今期最後の未来院長塾が開催されました。
未来院長塾が受講生の皆さんに問題提起したい事は、2025年問題に対して、またその先の未来の問題に対して、歯科がどのように備え対処できるかについてです。
人口減少の波は、外来受診の人数が減るだけではなく、歯科医院に勤める人数も減るという事も同時に起こります。我々が仕事をしている環境は、未来の当たり前ではなくなっているかもしれません。
今回のテーマである遠隔診療は、そんな未来の当たり前を考える示唆に富んだ内容となりました.
東京女子医科大学歯科口腔外科 口腔顔面痛み外来 統括医師 長縄拓哉先生をお招きし、3時間ご講演頂きました。
1.遠隔診療をやってみる
遠隔診療と聞いて何を思いつくでしょうか。都心部にいながら最新の機器を使い、離島や僻地で行われる医療をまず思いつくのではないでしょうか。
最近では法整備が進み、都心部の忙しい方でも活用できるシステムが開発されています。
眼科や皮膚科での最新の取り組みを実例を基に、受講生とスマートフォンを活用して遠隔診療を疑似体験しました。何も最新のデジタルデバイスを用いなくとも、自分の持っているスマートフォンでも遠隔診療ができる事が分かりました。
遠隔診療を上手に活用する事で、日中忙しい人は勿論、外来に行けなくて困っている方にも医療を届ける事がきっと出来る筈です。
また受講生同士が遠隔診療の可能性について意見し合い、活用方法について発表しました
2.慢性疼痛マネジメントを遠隔診療へ
痛みの専門外来としてキャリアを積まれている長縄先生が、遠隔診療を用いるきっかけについてお話し頂きました。
アメリカでの遠隔診療は皮膚科と精神科でガイドラインが出来ているほど進んでいるという事。慢性疼痛患者は精神疾患を患っている事が多く、精神疾患の患者への遠隔診療の持つ効果から、遠隔診療を用いて外来受診が困難な方への医療を提供するヒントを得たそうです。
ノルウェーでの研究結果や長縄先生ご自身の研究についてもお話し頂きました。
また、慢性疼痛メネジメントの一環として、アロマセラピーにも着目し、ご自身でもUNI aromaという会社を立ち上げたそうです。アロマの効果やUNI aromaの持つミッションについてもご紹介頂きました。
3.法整備
遠隔診療に関連した法整備の流れについて、過去の法律から最新の法律について分かりやすく解説頂きました。
電子メール、SNSを活用して診療を行っても良いという法整備が整った事は画期的でした。勿論、法の解釈や費用請求の詳細、何より遠隔診療を提供する際の注意事項についても受講しなければ分からない事もありました。
4.実例と課題
長縄先生と10月の講師である林先生から在宅医療や施設での実例を紹介頂きました。高齢者、幼児での実例から、患者だけでなく医療従事者や介護者にとっても恩恵のある方法である事が分かりました。
遠隔診療の今後の課題として、エビデンスの構築と周囲への認知が挙げられます。
その為に、長縄先生は5つのプロジェクトを掲げています。
①ブログを活用し、情報発信②スマホで実臨床③システマティックレビューによるエビデンス構築④臨床研究RCT⑤企業コラボ
①については長縄先生のFacebookから拝見できるので、受講生の皆さんもフォローし応援しましょう。
5.遠隔診療の可能性
講演の最後には講演内容を踏まえて、遠隔診療の活用方法について改めて受講生が意見を発表しました。
医療を提供する側の働き方の一つとして、学びの一つとして、何より本当に困っている人に我々が遠隔診療を通じて出来る事を真剣に考える時間となりました。
我々が40代、50代、60代を迎える時にはどんな社会になっているのかを想像してみましょう。自分一人で考える、想像できる事は限りある事で、自分以外の意見も賢く取り入れ、次代のスタンダードを築いていきましょう。
特に今回のテーマは実際に聞いてみないと、イメージしづらいテーマだったのではないでしょうか。ですが、遠隔診療という言葉が持つイメージと裏腹に、すごく身近に感じられるもので、受講生にとってもアイデア溢れる講演内容となりました。
働き方改革、在宅医療の選択肢の一つとして魅力的なオプションを手に入れる事ができました。これからも未来院長塾は様々な切り口や、視点から未来の当たり前について考える場を提供していきますが、2017年度の未来院長塾はひとまず終了です。
少しの休憩を挟み、来年2月には2018年度未来院長塾を開催します。
来期もチャレンジングな企画を考えていますので、受講生の皆さん楽しみにして下さい。
ではまた。
新井 是英
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