「最近の製品は長持ちする」って言われたら、「それってどうやって調べたの?」と聞いてください

ヘルスとは、健康という意味です。 リテラシーとは、溢れるほどに膨大な情報の中から必要な、あるいは正しいものを選択する能力のことです。 したがって、ヘルスリテラシーとは、健康に関する情報を正しく選択する能力と言えます。 


先日、大阪でご開業の佐藤琢也先生による、ヘルスリテラシーについての素晴らしい講演会に参加したので、少し紹介します。 例えば、 「最近のレジンは長持ちする」と言われたとして、 皆さんはどう感じるでしょうか? 「へー、そうなんだ」 と簡単に納得した人がいれば、それは要注意です。「最近」という言葉は、どのくらいの時間経過を想定するでしょうか? 「最近、ジムに通い始めた」 「最近、風邪気味だ」 いずれの例も、ここ数日あるいは数週間くらいを想定するのではないでしょうか?


  大阪大学歯学部同窓会臨床談話会にて(佐藤琢也先生ご担当)


一方、 「長持ち」という言葉は、どのくらいの時間経過を想定するでしょうか? 10年、20年、あるいはもっと長い期間ではないでしょうか?

 つまり、最近の製品が長持ちするかどうかなんて、誰も確認したことがないわけで、それでも長持ちすると期待されるにはそれなりの根拠が必要となります。 

特に、人の健康や医療に関する情報を取捨選択する場合は、上記のような「一見正しいように見えるが実は破綻している情報」に気を付けなければいけません。  


医療の現場では、常に様々な選択に迫られます。 どのような術式にするか、 どのような薬を使うか、等。 しかし、現実では、 「先輩がやっているから」とか、 「以前、この薬剤を使用してうまくいったから」とか、 そういう、経験値や人の意見という、科学的根拠に乏しいことに基づいて重要な決断がなされていることが散見されます。 健康グッズや食品会社による広告などを注意深く読んでいると、様々な危険な情報を見つけることがあります。 

例えば、「歯医者さんの100%が推奨する歯ブラシ」とか言われても、僕はインタビューされたことありませんし、一体どこのどんな、何人の歯医者さんにインタビューしたのかをはっきり説明する必要があると思います。 「歯医者の友達3人に聞いたら、3人がいい歯ブラシだと言った」という条件であっても、「100%の歯医者さんが推奨」と言えてしまうわけです。 


日本国民全てが、高いヘルスリテラシーを身につければ、それはとても素晴らしいことなのですが、簡単ではないでしょう。 それならばせめて、我々医療従事者は、 健康や医療に関する情報だけでも、正しく理解し、発信出来るようになればいいなと、切に願います。


大阪歯科大学附属病院 障がい者歯科
田中 佑人





未来院長塾

バランス良く学べる場を提供し、将来の目標を達成するためのキャリアパスを、自分自信で描くことができる歯科医師の養成をミッションとしています。そのことが、医療を受ける生活者や、地域社会への貢献に繋がり、歯科医療従事者自身も社会に必要とされ、双方の満足に繋がると信じています。

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